映画の基本情報
- タイトル:人生はビギナーズ(Beginners)
- 公開:2010年/アメリカ
- 監督:マイク・ミルズ
- 出演:ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、ゴラン・ヴィシュニック
主人公オリヴァーは、75歳の父ハルから「実はゲイである」とカミングアウトされます。
やがて父は亡くなり、残されたオリヴァーはアナという女性と出会い、恋に落ちていきます。
この物語は監督自身の体験をもとに描かれたヒューマンドラマです。
ライオンとキリンの問い
「ライオンが欲しい」と願っても、目の前に現れたのは「キリン」だった──。
この例え話でライオンは理想、キリンは現実を表します。
理想を追い続けるか、現実を受け入れるか。人生は常にその選択の連続です。
ライオンを待つ場合
本当にライオンでしか満たせないと分かっているなら、妥協せず待つべきでしょう。
ただし「本当に来るのか?」「待ち続けるコストは?」を考える必要があります。
キリンを選ぶ場合
理想とは違っても、キリンにはキリンの良さがあります。
新しい価値観や喜びをもたらしてくれるかもしれません。
第三の選択肢
一度キリンと過ごしてみて「やっぱり違う」と思えば、その時にライオンを探せばいい。
選択は一度きりではなく、柔軟に変えていいのです。
映画の登場人物たちも、このライオンとキリンの問いに向き合いながら生きているように見えます。
父ハルの挑戦──理想を手に入れる勇気
ハルは若い頃、ゲイでありながらジョージアと結婚しました。
お互い理解し合っていたものの、心は別の方向にありました。
妻の死後、彼は息子にゲイであることを告白し、堂々と新しい人生を始めます。
やがて仲間や恋人アンディに出会い、以前よりも表情豊かに人生を楽しみます。
これは「現実のキリン(結婚生活)」から「理想のライオン(本来の自分としての生き方)」を選び直した例。
恐れながらも挑戦したからこそ、理想を手に入れることができたのです。
言い訳で傷つかない生き方
登場人物たちは理想を追う前に、予防線を張っていました。
- オリヴァー:「どうせうまくいかないと思ってしまう」
- アナ:「転々とする方が楽。別れも簡単」
- アンディ:「僕はゲイだから」
こうした言葉は、自分を守るための言い訳でもあります。
年齢、容姿、能力──現実でもよくあることです。
けれど最後に彼らは一歩踏み出します。
「どうなるかわからないけど試してみよう」
その変化こそが、ライオンであれキリンであれ、生きる力になるのです。
親子関係が与える影響
親子の距離感も、彼らの選択に大きな影響を与えていました。
- オリヴァー:愛のない結婚生活を送る両親を見て「結婚はうまくいかない」と思い込む。
- アナ:自殺願望を抱える父親から毎晩相談され、人との距離を避けるようになる。
- アンディ:カミングアウトした父に拒絶され、人に心を開けなくなる。
親との関係が、大人になっても人との距離感に影を落としていく。
映画はそのリアルさを丁寧に描き出しています。
恋愛のリアル──オリヴァーとアナ
二人はパーティで出会い、惹かれ合い、やがて同棲します。
しかしアナは理由も言葉にできないまま不安を抱え、生活に馴染めず去ってしまいます。
- 男性(オリヴァー):論理的に「どうせうまくいかない」と判断して別れを選ぶ。
- 女性(アナ):感情的な不安を言葉にできず、ただ苦しむ。
別れのきっかけも、戻るきっかけも異なります。
論理と感情、その両方を理解し合うことの難しさが浮かび上がります。
「人生はビギナーズ」とは?
人生は、いつも初心者(ビギナーズ)。
新しいことを始めるたびに、怖さや傷つきと向き合わざるを得ません。
- 「どうせ無理」と諦めて距離をとること。
- 「自分は◯◯だから」と引け目を感じること。
- 「独りは楽」と言い聞かせながら、心では誰かを求めていること。
結局のところ人生は、ライオンを待つのか、目の前のキリンを受け入れるのかの繰り返しです。
あなたはどうしますか?
いま目の前に現れている「キリン」を、一度受け入れてみたいと思いますか?